鍼灸の道へと進むきっかけや大学進学までの経緯についてが、前回の内容でした

大学入試が行われた試験会場は東京だったので、実は入学するまで一度も大学に足を運んだことがありませんでした

当時は今のようなGoogle Mapもなく、大学のパンフレットの案内には、京都駅から電車に乗って少し移動した場所に大学があると書かれてはいたものの具体的な場所のイメージは湧かないまま

はじめて大学に向かったときのことは、いまでも鮮明に覚えています

京都駅から亀岡へと向かう途中、保津峡の美しい景観が電車の窓から見え、その時は「ずいぶん山奥にあるんだな」と感じでいました

ですが、それはほんの序の口で亀岡を経て園部までは電車でしたが、園部から先はディーゼル車に乗り換え福知山方面へと、さらなる奥地に進みます

イメージとしては東京の友達の家に遊びにいったら、そこは東京は東京でも、着いたら青梅のほうだった、そんな感じに近いでしょうか

今では大学の前に駅ができていますが、当時は最寄りの日吉駅からバスでさらに移動しなければなりませんでした

大学の校門の前には、校舎へと続くかなり急な坂道のお出迎えがあり、バスのエンジンは呻りを上げながら、その坂をのろのろと登っていきます

それから入学式を無事に終えた後、帰りはバスの時間が合わず、駅まで歩いて移動することにしました

しかし、歩くには思っていた以上に距離が遠く、それ以来、卒業するまでの間、その無謀な行為は二度と試みることはありませんでした

駅にたどり着き電車を待っている間、入学の報告を地元の祖母にしようとポツンとあった公衆電話から電話をかけます

明治生まれの祖母は、電話口で「お前がいまいるところは富士山よりも遠いのか?」との素朴な発言に気持ちがほんの少し和んでしまいました

電車を待つ駅のホームから見渡せる景色は、京都の雅な風情にはほど遠く感じたものです

そんな光景を前におもわずあの名曲、海援隊の『思えば遠くにきたもんだ』が武田鉄矢さんの声で、何度も脳内を駆け巡って流れていたのでした

濤鹿堂

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